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地方別節句

三月節句

北海道・東北・関東地方

北海道では、雪が残る時期ながら新暦で三月節句を行うのが一般的。「山遊び」や「磯遊び」は少なくなりましたが、青森県では旧暦の三月三日ころに、子供たちが浜辺で蟹や貝をとって煮炊きをしたり「浜遊び」をしたりする地域があります。山形県最上郡では「山の紙の勧進」がいまも行われています。これは、春になると山の神が里に降りてくるため、子供たちが主役を務めて山の神に花見をさせる行事です。もともとは旧暦の三月三日に行われていましたが、現在では四月三日に開かれています。

北陸・甲信・東海・近畿地方

月遅れで三月節句を行うことが多かった石川県でも、最近では新暦に行うことが増えてきたようです。新潟県では、「山遊び」を「山遊山」と言い、和歌山県では「磯遊び」のことを「浜遊び」と呼んでいます。まだ桜の咲かない季節とはいえ、山梨県では子供たちが重箱を持って山へ遊びに行き、長野県の一部でも川のほとりにムシロを敷いて、五目飯などを食べながら一日遊ぶ行事が盛んです。愛知県三河地方では、子供たちが「おひなさまを見せて」と言いながら家々をまわり、お菓子をもらって歩く「がんどうち」という行事があります。

中国・四国地方

鳥取県や島根県では、三月節句が新暦に行われます。ひな祭りの祝い膳に、島根県隠岐地方では白の平餅とヨモギの菱形の餅をつくって供えるのがしきたり。島根県益田市では、ちょうど桜が咲くため「ひな節句」に、花見にも出かけるようです。また、鳥取県の千代川流域、岡山県笠岡市などでは「流しひな」が行われています。岡山県の吉備高原から中国山地にかけては「山遊び」が盛んで、花見の料理として、タニシの煮つけなどを重箱に詰めて持って行きます。また、県内では「ひなあらし」と呼ばれる行事も。これは、お互いの家をまわり、ひな段の前でお菓子やご馳走を食べるというものです四国の徳島県海部郡などでは「磯遊び」が一般的。以前は、旧暦三月三日の大潮のころに浜でとれたものを煮炊きしていましたが、現在では、四月三日に弁当などを持って出かけるようになりました。

九州・沖縄地方

旧暦に花見を行う佐賀県では「磯遊び」を「せっくいそ」と言います。これを鹿児島県姶良郡では「浜でばい」と呼び、四月に山や海に出かけます。奄美大島や沖縄県には、この日には海のものを食べるという言い伝えが残っています。沖縄県では旧暦の三月三日の「はまうり(浜下り)」のときに、重箱料理を持参して浜で海産物をとったりします。これは、本来は海水で禊を行うという意味があったと言われているもので、現在でも平安座島ではとくに盛大に行われています。また、この日は「さんぐゎちさんにち」や「さんぐゎちあしび」とどとも呼んで、家々で仏壇や火の神に健康祈願を行う習慣も。この際、祓いの意味を持つ「ふーちばーむーちー(よもぎ餅)」をつくるのがしきたりです。

COLUMN
地方別・五月節句

北海道・東北・関東地方

北海道では地域によって、まだ雪が残っている季節。このため、五月の節句を旧暦に行う地域と新暦に行う地域とがあるようです。岩手県盛岡市と岩手郡では、旧暦五月五日のころに、「チャグチャグ馬コ」と呼ばれる馬の祭りが開かれます。「笹巻」など、めずらしい節句のお菓子がつくられるのは山形県の村山地方です。埼玉県北葛飾郡では、五月三日と五日に「凧あげ」が行われます。

北陸・甲信地方

新潟県の五月節句は、六月四~五日にかけて行われるのが通常。子供たちが菖蒲の葉を束ねた棒で地面をたたき、豊饒を祈る行事が行われます。山梨県では、鯉のぼりと一緒にのぼり旗もあげます。屋内にも五月人形に加えて、座敷のぼりを立てて飾るのがしきたり。もともとは月遅れで行われていたため、ゴールデンウィークの連休前から六月六日を過ぎるころまで一か月以上飾っておきます。

東海・近畿地方

静岡県では、古くから長男の誕生を祝う「凧あげ」が各地で盛んに行われます。いまでも浜松市の「浜松まつり」や榛原郡相良町の「相良の凧合戦」などは有名。これらは、五月三日から五日にかけて盛大に開かれます。五月節句の鯉のぼりやのぼり旗を立てないのは、愛知県瀬戸市の一部。こういったものを立てると作物に害虫がつき、疫病が流行るなどの良くないことが起きると言われているためだそうです。

中国・四国地方

岡山県笠丘市では旧暦の端午の節句に近い土曜の夜、東西の山に提灯を飾り、仕掛けを競う「ひったか」といく行事と、その翌日に紅白にわかれての船こぎ競争をする「おしぐらんこ」が行われます。備中地北部や美作地方では五月六日を「牛の菖蒲」と言い、牛を菖蒲でこすって洗い、牛小屋に菖蒲をあげたりします。五月五日に「大凧合戦」を行うのは愛媛県喜多郡。越智郡の大山祇神社では、旧暦五月五日の「御田植え祭り」で「ひとり相撲」という神事が開かれます。豊作祈願のこの神事は秋祭りにも行われ,目に見えない田の神と関取が相撲をとり、二勝一敗で田の神が勝つしきたりです。子供が菖蒲で小屋をつくって供えものをする高知県南国市の「えんこう祭り」は、六月第一週に開催します。

九州・沖縄地方

新暦の五月一~五日ごろまで鯉のぼりを飾っておくのが佐賀県などです。九州地方では、端午の節句の日取りは一概にいつとは言えません。沖縄県では、旧暦五月五日に「あまがし」という料理と菖蒲を仏壇や火の神に供えるしきたりがあります。これは、主に各家庭ごとの行事ですが、地域によっては親類中で祈願することもあるそうです。また「ハーリー」という船競争も県内全域で盛ん。那覇市では新暦五月五日にこの行事が行われ、ほかの地域では五月四日に開催されることが多いようです。


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