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結婚前後に必要な贈りものは?

意味と目的と踏まえてふさわしい贈りもの選びを


結婚の前後には、それにまつわる贈りものの機会が数多くあります。それぞれに意味があり、またしきたりがあり、しかも地方や家によって多種多様に変わるため、一つ間違うと取り返しがつかないことになる場合も。そういったことを防ぐためにも、先方の心の機微に触れる品を選び、体裁を整えて機会ごとに贈りものをすることが基本。また、この基本を守ってこそ、初めて心と心の懸け橋となる贈りものの意義が生きてくるのです。とくに、ギフト業に携わる人なら慣例に根ざす意味や目的を踏まえ、現代へのアレンジを試みるセンスを心得ておくべき。それがワンランク上のサービスでしょう。

① 相手宅への初訪問
結婚を前提とする交際相手の家族に初めて合うときには、形の整った食品を手みやげに選ぶのが無難です。家族の好みなどを事前に相手に尋ねたうえで、老舗の菓子折りやワイン、郷里の名産品などを。こういった相手の家族の好みを理解する心配りが、先方に好印象を与えるポイントになると思われます。恋愛による結婚が増えた現代では、本人同士の意志が固まってから親同士が顔を合わせるケースも少なくありません。こういったときには、親同士の初対面で名刺代わりの品を交換します。品物には、名店や老舗の品、郷土の名産などから祝い事にふさわしいものを選べばいいでしょう。贈答体裁は、この段階までなら略式ののし紙でもかまいませんが、婚約の際には正式な贈答体裁に整えます。

② 婚約・結納
婚約の際には、昔からの決まりである酒や肴を。これは、酒肴を共にして心を通い合わせるため。形式を重んじる地方や家なら縁起の良い銘柄の日本酒を選ぶのがコツです。先方が右党なら祝い肴や祝儀用の菓子がいいでしょう。しきたり通りに親が結婚の申し入れをするなら、水引を結び切りにして体裁を整え、地方に合った祝い肴と酒、祝儀品を持参します。結納に関しても、地方によってそのしきたりや方法が異なります。お互いの家同士の考え方も含めて本人同士が話し合い、そのうえで何を、いつ、どういった形で贈るか決めるべきでしょう。具体的に、結納の際の婚約記念品としては、女性にはダイヤモンドか誕生石など宝石入りのエンゲージリングを贈るのが一般的。男性には時計やスーツ、宝石をあしらったネクタイピンとカフスボタンのセットなどを贈ることが多いようです。贈り方は、どういった形をもって婚約とするかによって変わってきます。詳しくは、本書の「婚」の章・婚約の部分をご参考に。(72頁~73頁)

③ 婚約中の訪問
婚約中の相手とその家族への接し方は、親しい親戚とのつき合いと考えるといいでしょう。出過ぎず、ケチらず、ほどほどにするのがいちばん。相手宅をたずねるたびに手みやげを買っていくのもかえって気を遣わせることになりかねません。ケーキやクッキーなど手づくりのものをおすそ分けという形で手みやげにする程度がいいでしょう。また、相手の家族の誕生日や入学・卒業など祝い事には心を込めて選んだプレゼントを。この場合、目上の人に贈るべきではない品もありますので、注意が必要です。あくまで、親しいながらもまだ家族ではないというけじめを忘れないようにします。

④ 仲人へのあいさつ
仲人宅へあいさつに伺うときには、やはり形を整えた品物を手みやげに選びます。二人で事前に相談して選んで置くのが常識で、道中で適当に見つけた品を買うようなことは禁物です。威儀を正した品物としては、洋酒や老舗・名店の菓子折などを選べばまず間違いないでしょう。このほかには季節の鮮魚や高級魚肉製品、祝い事にふさわしい銘柄の日本酒なども考えられます。お礼の金包の台敷きにも同格のものを。かつては足袋三足や草履などの習慣もあったようですが、現代なら酒や調度品、高級漆器や陶器などがふさわしいでしょう。

⑤ 引出物
引出物は、本来一人ひとりに渡すもの。ですから、記念品的な品よりも一家にいくつあってもうれしく、二人らしさが反映するものがいいでしょう。最近では、重くて荷物になるものは敬遠され、招待客が好みの品を選べるカタログギフトなどの人気が高まっているようです。ただ注意したいのは、引出物にも地域性があるということ。地域に根ざした披露宴を開くなら、こういったこともわきまえておくべき。また、予算の都合で別々の品にしたり、とくに主賓にのみ高級品にするのもマナー違反ということを覚えておきましょう。

⑥ 嫁のみやげ・婿のみやげ
挙式後、先方の家族に初めて会うとき「嫁、婿のみやげ」を贈ります。これは、お互いの家族と親子や兄弟関係になったあいさつの品。贈る時期や範囲に関しては、結納の折りに持参するなど、地方により異なるしきたりがあるので、地方や家の習慣を互いに話し合って決めましょう。贈る品は、現在では洋品雑貨がほとんど。ベルトやバッグ、傘やマフラーなどの実用品のほか、茶器や酒器、調度品、趣味の品なども使われます。体裁は、金銀か紅白の結び切りの水引を。表書きは意味を明らかにする「おみやげ」がいいと思います。贈る主名は嫁、婿の名前だけを。このほか、神棚や仏壇のある家にはロウソクや酒を「御神前」、お線香を「御先祖様」として贈ります。

⑦ 内祝い
披露宴に招かなかった方には内祝いを贈ります。一般的には、お祝いの半額程度の品を挙式後一か月以内に贈るのがしきたりです。しかし、本来、内祝いとは祝ってくださった方やお世話になった方に、本人たちの喜びを分け与える意味で贈るもの。披露宴でもてなすことも内祝いの一つであるわけです。ですから、披露宴に招待できなかった人を含めて、必ずしもお祝いをいただいた場合にのみ贈るものではありません。世話になった方など喜びを分け与えたいと思う人がいるなら、気を遣わせない程度の品を選んで贈ってかまいません。贈る品物は、近所や同僚などへはお赤飯代わり程度の品。砂糖や菓子折りなどのほか、しゃれた実用品などを配ればいいでしょう。若い友人などにはルームアクセサリーや家庭用品などのモダンなものを。親戚に贈るのは記念となるような漆器や陶器、インテリア用品。年配の人へは鰹節などの祝儀用品が無難でしょう。贈答体裁は、紅白十本結び切りののし紙で、表書きは「内祝」に。贈る主名は、新しい姓で二人の名前を連記します。こいったことも、一人前の夫婦として歩み出したからには親任せにせず、本人たちで手配したいもの。しかし、親の知人などへ内祝いを贈る場合は、本人たちからあいさつ状を添えるだけでなく、親からも礼状を出すようにしましょう。

⑧   あいさつまわり
結婚前後の贈りものの物の中で最後になるのがあいさつまわりの品。かつてのように実家の近所へあいさつまわりに母親が嫁を連れて歩く必要はありませんが、互いに結婚した相手を紹介するためにも二人で伺うようにしましょう。現在では、親しくしているお宅へ伺うだけでいいでしょう。また、親戚へのあいさつも同様、本人二人で伺うのが当然のこと。それよりも大切なのは新居の近所。時期は、新居に住み始めた当日か翌日までに。早朝や夕方などの忙しい時間帯を避けるのは当然のマナーです。近所などへのあいさつまわりの品は、地方の習慣に基づいて考えるのが無難。若い世代が多い新興住宅地なら、はがき十枚や石けん、タオル、クッキーなどがよく使われているようです。古いしきたりが根強く残っている地方なら、回礼半紙や懐紙、鰹節や風呂敷などの風習にのっとったものを。いずれも、受け取る側に負担にならないものを贈ります。品物には結び切りののし紙をかけ、姓をしっかりと記入します。表書きは「ごあいさつ」。
 また、仲人宅へは新婚旅行から帰ったらすぐに二人そろってお礼と報告のあいさつに伺います。このときは旅行先で求めた少し高価な洋酒か名産の調度品などを添えるか、改まった形の菓子折もしくは酒肴を贈ります。


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